こんにちは、QUATRE(キャトル)です。
今月はじめ、新しい認知症治療薬 アデュカヌマブ(ADUHELM™)が米FDAで承認され話題になりました。
これまでの薬は、認知症の進行を遅らせる薬だったのに対して、
この新薬は、アルツハイマー型認知症の原因物質に直接作用するという画期的な薬で、
エーザイの株価は高騰、取引が一時ストップするほどの注目でした。
夢のような新薬ですが、とても高価な薬で、日本でも認可されたとしても、実用化までは、まだまだハードルが高そうです。
認知症は予防できるのか
厚生労働省の試算によると、認知症患者の推定人数は、
2025年 730万人(65歳以上の5人に1人)
2040年 953万人(65歳以上の4人に1人)
また、認知症の一歩手前のMCI(軽度認知障害)の患者数は、
2021年時点で約400万人と推定されています。
(引用元:明治安田生命HPより)
MCIに診断されると、
1年以内 12% 5年以内 半数 が、
認知症を発症するというデータがでています。
しかし、
MCIを早い段階で見つけることで、認知症は予防できると言われています。
著書に『死ぬまで家族に迷惑をかけないために今すぐ知っておきたいボケない技術』(かんき出版)などがある神経内科医で米山医院院長の米山公啓さんは、こう言う。
「MCIを放置しておくと5年間で約半数が認知症を発症しますが、適切な治療や生活習慣の改善で進行を阻止することもできます」(米山さん)
MCIになると、認知症になりやすいものの、約3割の人は正常な認知機能を取り戻したという報告もある。(引用元:介護ポストセブンより)
そうとなると、認知症予防を、少しずつでも取り入れておきたいですよね。
認知症予防に何がいいのか
認知症の決定的な予防法は、実は、まだ確立していませんが、様々な臨床データから、認知症の予防になることが分かってきています。
認知症を予防するには、
- 頭の体操(脳トレ)
- 適度な運動(有酸素運動)
- バランスのよい食事と睡眠
- 人と関わること
が、大切だと考えられています。ポイントは次の5点です。
(引用元:LIFULL介護HPより)
千葉大学の研究では、趣味が多いほど認知症発症リスクが低くなる傾向がみられました。
追跡期間中に 4758 人(9.6%)に認知症を伴う要介護認定が発生しました。男女いずれも,認知症リスク(HR)は グラウンド・ゴルフ(男: 0.80,女: 0.80),旅行(男: 0.80,女: 0.76)を趣味としている人において,それらが趣味では ない人と比較して低い結果でした。さらに男性ではゴルフ(0.61),パソコン(0.65),釣り(0.81),写真撮影(0.83), 女性では手工芸(0.73),園芸・庭いじり(0.85)を趣味とする人で低い結果でした。男女ともに趣味の種類の数が多 くなるほど認知症発症リスクが低くなるトレンドが確認されました(1 種類増えるごとに,男:0.84,女:0.78)。(引用元:千葉大学 報道発表 Press Release No: 235-20-26)
その趣味のひとつとして、いま、折り紙が、注目されています。
認知症予防になぜ折り紙がよいか
脳を活性化させるには、指と口を動かすことがいいと聞かれたことはありませんか。
なかでも、折り紙は、手指を使い、様々なことを考えながら作品を作るので、脳の刺激になり、その結果、認知症予防効果が期待されています。
脳のトレーニングになる
(引用元:看護roo!より)
大脳は、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉に分かれていて、部位によって次のような役割があります。
前頭葉 思考・判断・運動の指令 デザインする過程(企画力)
頭頂葉 空間認知(位置・方向)・感覚情報(手触り・形・温度・痛さ・重さ・圧力)を処理
後頭葉 目からの情報(色・形など)を処理
側頭葉 耳からの情報を処理・記憶や言語(聞く・話す)の理解・感情を生み出す
脳の活動を測定する実験では、折り紙をすると、活発な活動を示す赤の範囲が広くなり、前頭葉と頭頂葉ともに効果があることが分かっています。
(引用元:ユーキャン通販ショップより)
また、特に折り紙をしているときは、単調作業やぬり絵をしているときと比べて、赤い領域が広く、前頭葉が盛んに活動している結果(60代女性)が出ました。
単純作業 | ぬり絵 | 折り紙 |
(引用元:PRtimesより)
折り紙は、簡単なこどもの遊びのようで、実は、大脳の4つの部位を使うとても高度な遊びなのです。
達成感
難易度が少し高めの作品や、くす玉など時間のかかる作品が折れたときに、達成感を得ることができます。
記憶機能の活性化
自分がこどもだったころに折った記憶や自分のこどもと折り紙を折った記憶を思い出す方もいらっしゃるでしょう。当時の心境を思い出すことで、脳の記憶機能が刺激されて、脳が活性化すると考えられています。
また、作品を作り終えたときに、作った時の苦労など少し前にしたことを振り返ることで、記憶力の低下の防止にも効果があります。
創意工夫
色を選ぶことでカラーセラピーの効果や、紙質を選んだり、はじめての折り方をどのよう折るか考えたり、試行錯誤や創意工夫することで、前頭葉が刺激されます。
コミュニケーション
他者と交流する機会が多い人は、認知機能が低下しにくいことが分かっています。
作品を折りながら、周りの人と思い出話をしたり、自分が折った作品を家族や友人などに見せることは、自分の想いを伝えるコミュニケーションのきっかけになり、認知症予防効果が期待されます。
続けやすい
認知症予防に効く脳のトレーニングは、毎日続けることがポイントです。
折り紙は、多くの高齢者にとって、子どもの頃に遊んだり、自分の子どもが小さい頃に一緒に遊んだりしたことがある馴染みのある遊びのひとつです。
道具をたくさん買いそろえなくても、気軽に始めやすく、続けやすい趣味といえます。
認知症予防に折り紙をはじめよう
いろいろな種類の折り紙が販売されています。
裏が白の教育折り紙が、表裏が分かりやすくて折りやすく、安いので、練習用におすすめです。
飾りにしたり、プレゼントにしたり、複雑な作品を作るときは、両面カラーの折り紙や和紙の折り紙がおすすめです。
和紙はちょっと高いですが、手触りがとても気持ちいいですよ。
認知症予防の折り紙の選び方
認知症予防の折り紙は、
- あまり難しくない(平面)
- 時間のかからない
- そばにいる人も一緒に楽しめる(おもちゃ要素)
から始めて、慣れてきたら、難易度の高いものにチャレンジすると続けやすいです。
題材は、
- 季節感を感じられる題材(行事・花・虫)
- 実用的な道具(封筒・箱)
が、おすすめです。
季節の折り紙の題材|春
ひなまつり >> 桃の節句飾り雛人形(ひな人形)など
桜
こどもの日 >> こどもの日に折りたい折り紙 まとめ10選
季節の折り紙の題材|夏
七夕
あじさい
かたつむり
かえる
せみ
金魚
季節の折り紙の題材|秋
お月見
落ち葉
どんぐり
季節の折り紙の題材|冬
クリスマス
正月
節分
認知症予防の折り紙おすすめ本
認知症予防の折り紙を始めるには、通信教育を受ける、本を買う、Youtubeで見る、などさまざまな方法があります。
体系的に進めるには、通信教育や本を見ながら始めると、続けやすいですよ。
活発脳をつくる60歳からのおりがみ
2018年3月に発売したされ、販売部数は4万部を突破。13度目の重版をされている、ベストセラーです。大判で、字が大きく、オールカラーでわかりやすいと高評価です。
杏林大学名誉教授 精神科医 古賀 良彦 医学博士による監修で、医学的な見地からの詳しい解説もついているので、介護者が読んでも楽しめる書です。
ボケない! 老けない! シニアのための絶対脳力を120%ひきだす折り紙ドリル
日本福祉大学教授 京都大学名誉教授 久保田 競 医学博士 監修で、完成図の写真からイメージして完成させたり、制限時間内に作ってみるなど、実践編のついたドリルです。
久保田先生は、図形認知や記憶に関わる視覚中枢を発見されるなど、大脳における前頭連合野研究の第一人者です。脳を活性化させるメカニズムについて詳しく知りたい方におすすめです。
動画で学ぶ認知症予防の折り紙
まずは、お試しにYoutube動画で折り紙にチャレンジするのもいいですね。
愛知県が高齢者向けに折り紙作家竹内ケイさんの動画を配信しています。ゆっくり解説してくれているので、おすすめです。
まとめ
2040年には、65歳以上の4人に1人が、認知症になると言われています。
認知症予備軍と言われる、MCI(軽度認知障害)の初期段階で対策を取ることで、認知症予防ができることが分かっています。
折り紙は、様々なことを考えながら、手指を器用に使うことによって、脳への刺激になり、認知症予防や脳梗塞のリハビリにも効果が期待されています。
最近は、折り紙の折り方を紹介したホームページや動画などがインターネット上で紹介されています。認知症予防の対策として、新しい趣味に折り紙を取り入れ、色々な作品にチャレンジてみてはいかがでしょうか。